イベントレポート
●アイカム50周年企画「30の映画作品で探る”いのち”の今」

    第10回 胃はなぜ溶けないのか 細胞映像から消化の仕組みを解く <2019年12月21日(土)> 
上田:









アイカムの映画上映会、ずっと続けて今日で10回目になりました。私は司会進行をつとめますNPO法人市民科学研究室の上田です。よろしくお願いします。今日のテーマは、「胃」です。年末のこの折、胃に負担のかかるようなことを続けている方もきっといらっしゃると思うんですが、時季にふさわしいテーマかもしれません。胃というのは、非常に身近な毎日活躍してくれている臓器ですけれども、なんであんなに強烈な胃液を出すのに、胃自身は溶けてしまわないのだろうか。
それから、実は、私のつれあいが数日前インフルエンザに罹り、治ったんですが、治る時に「非常に食事が辛い と、なんで食べるのにこんなにエネルギーを使わなくてはいけないのか。食べるものによっても胃の働きなんかでずいぶんエネルギーの使い方が違うのかな、食べやすいものと食べにくいものって何なのかな、と疑問を口にしていました。考えてみたら不思議なことがいっぱいある「胃」なんです。今日はそれを映像で解き明かすということで、2本の映画を見たいと思っています。1本は短い14分、もう一本は43分の映画です。映画を通して、消化についての理解を深めていきたいと思います。
 私もアイカムの方と知り合って間もない頃、この『胃 巧妙な消化のしくみ』という映画を見たのですけど、本当に驚きました。科学映像の真骨頂といいますか。ものを観察して探求するということと、映像を撮るということがピタッと重なったすばらしい作品だと思います。
 今日は2本の映画を見た後に、飯野先生に来ていただいてますので、いろんな話をしたいと思っています。では、1本目の映画について川村さんの方から紹介いただけますか。 
川村: アイカムの川村です。今もお話あったように、胃の中はpH1とか2とか塩酸くらいの強い酸性で、タンパクを分解する、それでいて胃自身もタンパクなのに分解しない。その謎は、簡単に言えば、胃酸で溶かされないよう粘液で護っているというのが答えなんですが、そうなるともう一つ、謎が出てくる。胃袋の内側を粘液で覆ってしまったら、出てくる胃酸や消化酵素はどうやって、食物のところに届くのか。そのへんを丁寧に解き明かして行く映画です。  あすか製薬さんのスポンサードでドクター向けに作られましたが、映像をみれば、一般の方でもわかりやすいと思います。
 撮影時のエピソードとしては、毎日毎日、闇夜のカラス、真っ黒い映像を見せられ続けたんです。酸に会うと黒くなるコンゴーレッドという赤い色素を使って、胃酸の出てくるところを撮ろうというので、スタッフは毎日頑張っていたんですが、なかなかうまく見えない。すぐ真っ黒になってしまう。いつになったら撮れるんだろうな、と思っていました。それを電子顕微鏡も使っていろいろ工夫して見せています。ご覧ください。





                 ■ 映写   2005   『胃 巧妙な消化のしくみ』   14分
上田: これは製薬会社さんからのリクエストで作られたのですか。 
川村: はい、そうです。
上田: かなり新発見とか入っているように思いますが、学会で発表とかなさったのでしょうか。  
川村: 当時、監修の石原先生、太田先生、菅沼先生らが、こうなのではないかなという議論の最中だった課題を一緒に考えながら映像にしたということだったと思います。2005年日本潰瘍学会で、一緒に「胃酸は腺粘液とともに胃内腔へ分泌される −ラット胃粘液を用いたin vivo動的観察−」という発表をしています。
上田: これはいろんな映画祭で国際賞もたくさん受賞されているんですよね。 それでは2本目にいきたいと思います。  
川村:












これは私たちアイカムの自主制作作品です。DVD-Bookにして販売しています。2009年にこの第一弾『時空キューブ 生命01 呼吸』を作りました。こちらは今年3月この上映イベント第6回で上映しました。今日はその第二弾で2010年の『時空キューブ 生命02 消化』です。
 時空キューブは、私たちが試行錯誤して考え、生み出した表現です。科学映画というと必ず画面の中に「倍率何倍」とか「リアルタイムの何倍速」とか表記しろと考える方もいて、そうかと言って光学顕微鏡の倍率と電子顕微鏡の倍率もずれるし、スケールバーを入れるのも煩わしい。画面はなるべく夾雑物を入れずに集中して見て欲しい。時間と空間を直感的につかむには、どうしたらうまくいくんだろう。それは見ていただければわかるかと思います。
 この映画の最初のねらい、対象は、医者・看護師・薬剤師などを目指す医療系の学生さん向けと考えたんです。今まで長年撮ってきた映像をいろいろ入れまして、私たちも精一杯背伸びして、最先端のいろんな情報も入れて作ろうと努力しました。出来上がってみると、ちょっと難しかったらしい。(笑い)
今日のゲストの飯野先生との出会いもこの作品です。2010年春に岩手医大で日本解剖学会があり、大会長の佐藤洋一先生に招かれて、出展と地元高校生向けワークショップの講師に武田と参加させてもらったのですが、オワンクラゲから緑色のGFPを見つけた、ノーベル化学賞の下村脩先生もいらして蛍光タンパクのワークショップでした。今では、その蛍光タンパクを使った研究が発展していますが、この学会で「カハール介在細胞」のセッションがあり、飯野先生も発表者のお一人でした。消化管で筋肉細胞と神経細胞に介在するペースメーカー細胞と聞いて、これは製作中の『消化』の映画の中にぜひ紹介したいとお願いしたら、先生の撮影された写真をお借りできればと思っていたのが、突然、新しく蛍光染色したカハール介在細胞が届いて(笑い)、びっくりするやら、とても綺麗な標本でスタッフも感動しました。
上田: それでは2本目いきましょうか。  





                 ■ 映写   2010   『時空キュープ 生命02 消化』   43分
上田: ありがとうございました。最後は、老化や死にまで言及されていて、心に突き刺さるというか、そういう作品になっていたと思います。ちょっと休憩をはさんで、飯野先生を囲んでお話しましょう。  
〜 休憩 〜
上田: それでは1時間ほど、みなさん、映画をご覧になって疑問に思ったことや、胃や消化に関して普段気になっていることとかを、飯野先生にもお話いただいて進めていきたいと思います。
せっかくですので、飯野先生、自己紹介を兼ねて、今どんな仕事をなさっているのか少しお話いただけますか?  
飯野: 簡単な自己紹介はこのパンフレットの通りです。私は、山梨の出身ですが、卒業後は名古屋大学や今の福井大学で働いています。医学部を出たので医師の免許を持っていますが、卒業後、すぐ解剖学の研究室に入りました。顕微鏡を使って、ヒトを含めた動物の細胞や組織、胃や腸のつくりを研究しています。あと、大学で働いていますので、学生の教育がありまして、解剖学というのは、将来、医師や看護師になる学生に人体のつくりを教えています。実際は、医学部では、ご遺体を解剖して勉強することを指導しているのが、普段の生活、私のバックグラウンドです。
上田: 解剖って、医学部では必須なんですけど、教える先生というのは解剖の先生しか教えられないのですか。  
飯野: 基本的にはそうです。最近は、臨床の先生だったり、研究所の先生にもお手伝いしてもらいますが、ある程度、ストーリーというか、ヒトの体も消化器とか循環器とか分けて説明はしますけど、実際は体すべてつながって関わりあいがありますので、専門家として責任を持つ教員が全体を教えている形になります。病院の方に行くと、専門の消化器科とか循環器科というふうに別れると思いますが、基本的な勉強は、解剖学の研究室の教員が担当しています。
上田: よく解剖学といいますと、臓器の名前とか、どこがどんなふうにつながっているとか、細かい話ばかり出てくるように思うんですけど、今の先生のお話ですと、からだ全体をトータルにみる学問という感じを受けるんですが。  
飯野: そうなると思います。研究となると、どうしても専門性を追究し、どこかの専門に固定されますけど、教育あるいは学ぶ意味では、できるだけ総合的に学ぶべきであると思います。
上田: その中で、特に消化管とか消化管運動のあたりを詳しくやってらっしゃると伺ってますが・・  
飯野:
どうして消化管をやっているのか、聞かれたりするんですが、結論からいうと偶然です。学生時代に顕微鏡で観察するのが好きだったものですから、子どもの頃はおもちゃのような顕微鏡で蝶の羽の鱗粉とか、そういったことが好きだったので、学生時代から解剖学の研究室で、そこの先生が消化管専門だったので、実際に大学の顕微鏡を使う機会があり、やっているうちに観察して研究することが楽しくなって、そのまま研究分野として消化管を専門とした、ある意味なりゆきです。結果的には、自分に合っていたと思いますし、研究というのは誰かに指示されてやったのでは、将来性がないので、自分がやりたい、おもしろいと思う、興味がもてる、そういった分野をやって来たのはよかったと思っています。
上田: 今2つの作品を見ましたが、消化管というのは、ある意味、非常に奥が深い。動きがダイナミックですよね。そういうものを顕微鏡でとらえる時に、アイカムの映画では、たとえば、光学顕微鏡・電子顕微鏡・共焦点レーザー顕微鏡を組み合わせてやってますが、先生の研究もそうですか。  
飯野: そうなりますね。特に研究ということでいうと、一つの視点だけでなく、言いたいこと、発見したことが本当に正しいのか、証明しにくいところもあるので、光学顕微鏡でみたものをさらに電子顕微鏡で倍率を上げてみると、それがよりはっきりわかる。ただ電子顕微鏡は白黒の世界なので、光学顕微鏡で細胞に色をつけて、あるいはGFPを使って光らせてみる、そうすると細胞の性質がよりわかる。複数の方法、顕微鏡や手法を組み合わせて、よりはっきりさせることができる。
上田: それでは、皆さんの方からいかがですか。  
MT: 俗説なのかもしれませんが、最近、血液は骨髄で作っているのではなくて、消化管で作っているという話を聞いたのですが、本当はどうなのでしょうか。
上田: どうなんでしょうか(笑い)。  
飯野: 消化管で作っているという話があるんですか?
MT: やはり、俗説ですか?
川村: もしかして、あれですか・・胎児の時には肝臓が一時期、造血しますよね。赤血球を作ったり、そのことでしょうか。大人では・・
飯野: 大人では基本的に骨髄で作られる、ということになっていて、消化管では・・ないと思うんですが。胎児の頃、赤ちゃんですと、骨もまだ小さいですから、体全体を賄うだけの骨髄の量がないので、肝臓とか、脾臓という胃の横にある臓器で血液が作られて、体内を回る。あるいは胎児になる前は、もっと体の外、胎盤に近いところで作られて体の中に流れ込むことが行われています。成人に関しては、骨髄で作られるというのが正常な場合ですね。
■ カハール介在細胞
飯野:
さきほど、私がカハール介在細胞を専門的にやっているという話があったんですが、1990年代くらいに、ある程度、この細胞がわかり始めて、それが何をしているか、その働きがわかったのは、複数の方法論でこの細胞を観察して、やっぱりこの細胞はペースメーカーだ、ということがわかった。この細胞があることは1960年代からわかっていた、カハールは1900年代の人ですから100年以上前からわかっていたんですけど、それはこういう細胞がいると観察されただけで、それが近年の手法でより働きが明確にわかることになる。


※サンディアゴ・ラモン・イ・カハール(1852~1934スペインの神経解剖学者)
上田: もうちょっと具体的にいいますと、カハール介在細胞のはたらきをつかむには、どういう方法をとるのですか。  
飯野: 解剖というのは、細胞を見るのですが、一番よくやる方法は「固定」という細胞を固めてから観察する。つまり、生きている細胞ではない状態で見ていることが多い。固めてしまった細胞がペースメーカーとしてはたらいているかどうかはわからないのですが、いろいろな方法、最近では遺伝子を操作した動物と組み合わせてみますと、このカハール介在細胞がいなくなってしまった消化管を作ることができる。結果として、そういった細胞がいないと、ペースメーカーの働きがない。また、ペースメーカーのはたらきのない動物を観察すると、こういった細胞がない。というようなところから、この細胞のはたらきがわかってきたということです。
TS: 消化管の運動というのは、基本的にアウエルバッハ神経叢がやっていて、分泌とかをマイスナー神経叢がやっていると理解していたのですが、そのへんはどうなのでしょうか。
飯野: 大きな役割分担としては、アウエルバッハ神経叢が筋肉を動かして、消化管を動かす。マイスナー神経叢というのが粘膜の奥深くにあって、そこにいる細胞が分泌や血流の調整を行う、というのが基本的なパターンだと思います。
TS: それを結んでいるのが、カハール介在細胞なんですか? そうではなくて、運動の方を結んでいるということですか?
飯野: そうです、そうです。消化管の中にある神経というのは、先ほど映画にもありましたように、最近「第二の脳」といわれていて、ものすごくたくさんの神経が分布していて、その中に大きな集団として、アウエルバッハ神経叢とマイスナー神経叢と、これも神経が連なった網目があって、それらも互いに繋がっている。私が専門にしているカハール介在細胞は、ほとんどが筋肉の中にあって、神経が情報を出して消化管を動かそうとするときの入り口と言いますか、神経の情報が一回カハール介在細胞に入って、筋肉に伝わる役割をしている。もう一つは、伝えるだけでなく、ペースメーカーとして調整する。
TS: 消化管の筋肉には縦に収縮するのと、横に収縮するのとあるから、うまくやらないと蠕動運動ができませんからね。
飯野: そうなんです。適当に動いていると、食べたものを先に送るのか、戻すのか、行ったり来たりで進まないので。でも、カハール介在細胞はペースメーカーと言ってもイメージしにくい。心臓のペースメーカーは心臓の上の方にいて、そこから刺激が伝わるので心臓がうまく拍動するけど、カハール介在細胞は消化管全体にいるので、あらゆるところにペースメーカーがあったら、本当のペースメーカーはどこにあるんだ(笑い)と混乱するので、「ペースメーカー」という表現がいいかどうか。
自動車に例えると、カハール介在細胞が働いているのはエンジンがかかっている時で、車が動く・止まるということには関係ない。アクセル踏むのは神経、食べたものが進む。食べたものはゆっくり動かさないといけないので、ブレーキ踏むのも神経。筋肉を働かせる興奮性の神経と抑制性の神経、その間にあってアイドリング状態で、いつ刺激が来ても動かせる・止められるのをペースメーカーと呼んでいる、それがこの細胞、と考えられている。
上田: なるほど。  
TS: もう一つ、別の話ですが、小腸の消化でブドウ糖を作るところで、僕が学生に言うときには、「オリゴ糖の時には膜消化をやって吸収する。そうでないと膜の外(消化管内腔)で消化すると、できたブドウ糖が全部筋肉に食べられてしまう。だから膜消化で消化したらすぐに中に入れてしまうんだよ」と説明するのですが・・消化管の中だけで全部消化しているイメージが強いですが、学生にはそこをもう少し詳しく書いた方がいいのでは。
上田: 実際には糖の消化は吸収との関係で、どう見たらいいのでしょうか。  
飯野: 僕も基本的には膜消化と認識していまして、最終的には表面のところで消化して取り込まれるということだと思います。 ※映画の中では「膜消化」と言う言葉は使っていませんが、ナレーションで「(小腸の絨毛の)吸収上皮細胞一つ一つには、1000本以上の微絨毛があり、その微絨毛が体の内と外の境界。ここに2分子から1分子にする酵素がある。アミノ酸1個、グルコース(ブドウ糖)1個、最も小さな低分子になって微絨毛を越えたとき、初めて食物は体外から体内に取り込まれる。」と説明し、膜消化・吸収を描いています。
上田: 先ほどの話で、カハール介在細胞は非常にたくさんある。そうすると食べ物が移動していって、お互いに連携していないとできない仕事ですよね。そういう細胞同士の連携というのはどんなふうに取られている感じですか。  
飯野: これはまた難しい(笑い)のですが、ネットワークを作っている。特にカハール介在細胞は細長い突起を伸ばしていてお互いが絡み合っている。結果として、胃から大腸まで全体として繋がっている。それぞれの細胞同士は、特殊なギャップ結合という密着して情報を一つの細胞のように完全にコンタクトしている状態で繋がっている。ですので、あるところで刺激が起こるとそれがだんだんと伝わっていくという形になっています。
僕らは解剖学ですが、いわゆる生理学という、もっと生きた形で研究する分野があるんですけど、そういう専門家が見ると情報の伝わり方でもう一つ有効なのが、細胞の中でカルシウムが動いていく。
上田: ああ、なるほど。  
飯野: そういったカルシウムの動きを見ると、ザーッと流れていく映像なんかで捕らえられています。
上田: 面白いですね。カルシウムって、生体のいろんなリズムに介在しているようですね。  
飯野: そういった意味で、カルシウムってものすごく特別なものなんだなと思います。
■ 食べることと、生きること
MM: 私、こういった分野は初めてなので、すごく感激しました。映像がとても美しいですね。最後のナレーションで、食べることに対する喜び、幸せ感、それが心の形成にもつながっている、みたいなことがあって、私もなるほどなあ、と思って・・脳で考えて「ああ美味しい」と思うんだけど、逆に感覚器の方から、そういう感覚的・感情的なものが起こって、脳に伝わるってことがあるんだなあと思いました。
上田: そのあたり、いかがでしょうか。消化管の方から食べることの快楽が、信号なりなんなり伝わるということだと思うんですけど・・    
飯野: これも映像の中でありましたが、たぶん、食べるとか消化するということは、脊椎動物だけでなくて、形で言えば非常に原始的な、ヒドラのような腔腸動物、本当に体の壁と内側は消化管だけというような生物から、消化して吸収するというシステムができていましたので、やはり、取り入れるということは生きることの本質でしょうし、そこのところに喜びといいますか、本能的な意味が備わっているのではないかなと思います。
MM: 人間って、やはり、そういう根源的に生物なんだなあと考えさせられ、改めて思いました。
上田: なるほど、おもしろいですよね。そのへん、神経系が発達してくると同時に、感情なり喜びというのがどんなふうに形成されてくるかという話と消化がつながっているような気がして・・  
MM: そんな視点が新鮮でした。
AT: すごくおもしろかったんですけれども、素人的な質問ですが、脂質とか、器官が選んで取り込んでいるという話があったんですが、みんなああいう形ですべて役割がきちんと決まっていて、この先はもう変化しないんですか。 
飯野: 腸の絨毛なんかで、毛細血管に入るのと、リンパ管に脂質がとりこまれるという話だと思いますが、吸収は、私も専門ではないので・・(学生に)教える際はいかがですか?
TS: やはりくっつけるやつがいて、ポーンと取り込むと。
飯野: そうですね。なんでも勝手に入ってきては困るということから、糖を取り込む時には取り込むための装置がありますし、脂質もそうですかね。
TS: 脂質もコレステロールはたしかに阻害剤がありますから、そうですね。だから、ちゃんとしたキャリア(輸送)タンパク装置があるんでしょう。
飯野: そういったもので必要なものを分けて取り込む、というふうに進化してきた・・出来上がってきていると思います。逆に言うと、必要でないものは取り込まないのだろうと思うんですけど。薬剤なんかは、そういったものに似せて取り込ませるようにはなっているわけです。 
■ 腸内フローラ
AT: 今、腸内細菌が消化管と関連して、いろんな会社が、あなたの腸内細菌を調べます、と言っているんですけど、それってどうなんでしょう。(笑)
上田: 腸内細菌の判定ですね。実際にお知り合いの方とか、受けた方がいるんですか?  
AT: いえ、私は女性誌の編集をしているのですが、そういうサービスが各社山のようにあって1回1万円とかするので、本当のところどうなのかなと。
飯野: 専門ではないのでよくわかりませんが、どういう細菌が多いとどうということですよね、それがどのくらい科学的な証拠があるのか・・かなりわかっているものもありますし、噂レベルのものもあるかと思いますが。 
上田: 今後、いろいろ調べてみたいと思います。私たち市民研にも時々、そういう話題が来るんですね。どっちのヨーグルトがいいのか? (笑い)とか。腸内細菌のいろんな働きがわかってきて、注目が集まっているだけに、そういう商売も出てきているということなんでしょうね。  
川村: 私たちの会社は会長の武田をはじめ、腸内細菌の仕事は、腸内フローラ研究の黎明期の頃から、理研の先生方や研究者と一緒に映像化してきました。多くのヒトの腸内細菌を調べた研究から人によっていろんなパターンがあることはわかっているけど、本当にその人その人で違うので、それがどうなのか。この菌が多いからどうなのか、良いとか悪いとか、一概には言えないし、まだそこまではいっていないと思うんですけど。生まれてから、それぞれの環境・食生活の中で作られ育ててきた、お付き合いする仲間みたいな、その人独自の腸内フローラですから、バランスは大事だけど、あまりそれに一喜一憂しなくても良いのではないかと思うんですが。(笑い)
上田: 単純な判断が下せるような段階ではないだろうということですよね。  
■ 健康と消化管、細胞レベルでわかる病気
上田: 先ほどの消化管の映画を見て、皆さんも改めて、消化管はいろいろな不思議な働きをしていると感じたかと思います。一方、体の健康と消化管の働きについて、飯野先生は解剖をやっていらして、いろんな悪くなりかたが、細胞のレベルで見たらこういうことが関連している、とか、どこまでわかってきているのか。例えば、胃潰瘍などの映像を見ると、あっ溶けちゃったんだとはっきりわかりますが、解剖した時に消化管に関連する病気というのはどう分かるものなんでしょうか。  
飯野: 胃潰瘍や癌は形が変わりますし、胃から出血したりしたときなど、器質的な病気は内視鏡やバリウムの検査でわかる。そういった病変の見られない五月病とか、ストレスがかかってご飯が食べられない、会社に行こうとするとトイレに行きたくなる・・でも検査しても異常はない。最近、話題なのですが、IBS 過敏性腸症候群という消化管が非常にsensitiveになる病気がある。安倍首相が最初に首相になられて1年ほどで辞められたんですが、正式の発表ではないけどそういった腸の不調があったようです。かなりのストレスにさらされると、全体の働きのバランスが崩れて、ある場合は下痢・便秘、腹痛が起きるという病気が非常によく知られるようになりました。胃の上の方では、ご飯が食べられない、胸焼けなどがあって、特殊な検査でバルーンを入れて膨らませてみると、ちょっとのことで痛みを感じてしまう。
上田: なるほど。  
飯野:
実は、お腹が痛いという病気はかなり多いらしく、病院に行く理由の統計でもかなりを占める。検査しても特に悪いところはない病気、IBSも多い。もちろん、研究で、顕微鏡レベルで見ると、神経の周りに特殊な細胞がいたりしますが、細胞レベルで観察しないと変化が見られない。普通の人は内視鏡で粘膜を採って顕微鏡で見たりはできないので、原因不明のそういった病気が最近多いと言われるようになってきています。消化管の具合が悪い、胃もたれがひどい、普通はご飯を食べると胃が活発に動いてどんどん送り出すんですけど、胃の動きが悪くて消化が進まないとか、普通の検査ではわからないけど、細胞レベルで見ると、神経やカハール介在細胞、
                                                                                     粘液や免疫系の肥満細胞などが異常を
                                                                                     起こしていると言われています。
上田: そうすると病理学的な細胞検診とかしない限り、原因は決められないということですね。  
飯野: そうですね。最近は、そういった症状に対して、お薬も出ていますので、お薬を飲んで効いたら、そういうところが悪かったんだなあということもあるだろうと思います。
上田: もし仮に内視鏡で自分の胃の中を見られるようになったら、自分で健康状態をチェックできるということもありますか。(会場笑い)  
飯野: ファイバーのついた内視鏡は辛いし、胃とか十二指腸、大腸も下から入りますが、5メートルぐらいある小腸は無理ですし、最近は、カメラ付きのカプセルの内視鏡を飲み込んで、消化と同じでだんだん送られて、何日かすると出てくる。
上田: そうすると、自分でカメラ撮っているんですね。  
飯野: そうですね。自動で記録している。
上田: もし顕微鏡でその人の胃から大腸まで、観察できたとしたら、この人の消化管はここが悪いと、ある程度は対応づけられるんでしょうか。  
飯野: ただ、内視鏡は胃の内側、表面しか見ることができないので、壁の奥にある神経が変化しているのかは、実際には胃の壁を壊さなくては見られないので難しい。例えば、ヒルシュスプルング病は子供に多い、生まれた時から腸に神経がない病気で、特に大腸に神経がないので、内容物が腸に溜まってしまって、巨大結腸症とも言われます。実際、どこまで神経がないのか調べる手法があまりなくて、慶應の小児外科などはやっていると思いますが、神経が見えるようになる物質を使って内視鏡を入れて神経だけを観察する。そういった方法で、ここまでは神経は正常だけど、ここからは少ないよね、とそういったことをやっているところはあります。
上田: それは生まれて間もない赤ちゃんに対して、調べるということですか。  
飯野: そうですね。今の治療では神経のないところは救いようがないので、今後、iPS細胞などで神経を作ることができて、腸の中にネットワークを作れるようになればいいのでしょうが、今のところは神経がないと動かないので、そこは切り取らないといけない。ただ、どこまで切るか。消化吸収には、消化管はできるだけ長い方がいいので、できるだけ正常なところは残したいけど、外からみたのではわからない。取った切り口を確認して、神経の有無を確認しながら切らないといけないので、内視鏡で内部まで観察できるようになれば・・超音波で周りの構造を見ることはできるんですけど、エコーでは大きな構造は見られても、細胞レベルではわからないので、研究レベルでは薬品を使って、特殊な細胞、神経などを観察できるようにして体を傷つけずに観察する挑戦をしている先生もおられるということです。
上田: おもしろいですね。このアイカムの映画の続編が構想できるかもしれませんね。  
■ <時空キューブ>という表現
飯野: 実際の映像、血液の動いているのをみると、ああ生きているんだなあ、とものすごく実感できる。僕らは固定してある瞬間を止めて、その中で細胞の並びをみることを専門にしていますので、実際に動いているのはあまり見ない。動いている、生きているものを見るのは、ものすごく説得力もあるし単純におもしろい。生きていることが実感できるので、楽しく思いました。
上田: 撮るのはすごく苦労されたと思いますし、現象としてはすごく複雑ですから、ところどころグラフィックを使って図解されていますけど、そのあたりの苦労話を聞かせていただけると・・どうでしょうか。  
川村: 最初は医療系の学生さん向けに見て欲しいと思ったんですけど、それは固定されたもので勉強する前に、生きているもので、まずは実感してほしい。そこから勉強したらいいのではないか。私たちが長年撮ってきた映像があるので、それを見せたいと思ったのが一番なんですけども。大学の医学部図書館で買って学生の授業で使ってくれるところもありますが、なかなか採用されなくて残念です。
これを作った時に、いろんな方に感想を聞いたのですが、リアルな生の映像とCGの映像が一体化して繋がっているというところに・・私たちはあえてそういうふうにしたんですけど、そこに違和感を持つ方もいて、(上田:ああー)どこまでが実写でどこまでがCGかはっきりさせろとクレームつけられました。 ご覧になってわかるように、時空キューブ自体が、縦に回転すると拡大縮小、横に回転すると時間が早くなったり遅くなったり、見ていればわかると思うのですが、それについても細かいことを言う方は、科学的ではないのではないか、と言うんですよね。 
武田:




アイカムの武田です。飯野先生に染色をお願いして、まだまだいただけないだろうと思っていたら、最初にポッと送ってこられたんですよね(笑い)。こういう先生は初めてでした。
あの頃、10年前ですけど、学生さんや一般の人に、何をやってももうひとつわかってもらおうということで作っていたんですけど、NHKとかいろんなところから文句が出るんですよ。何倍で撮ったとか、何秒一コマとか入れなきゃいけないとか。そんなことより、もっとみんなが体の中のことをわかるように、わかればいいんだから、そういう作り方をしようということで、ああいう「時空キューブ」という、倍率だとか、場所だとか、飛んでいけるように。一番肝心なのは、やはり生体のイメージだろうと。(上田: はい) それだけをきちんと伝えればいいじゃないか。
 それで1本目が「呼吸」で、2本目が「消化」で、うまく表現できれば、いのちに対して、もっと自由な印象、イメージを与えることができるのではないか、そう思って作ったんですけど・・さんざん叩かれまして、でも直感的に、消化管ってこうなっているし、呼吸ってこういうふうなはたらきで動いてますよ、ということを、少し蛇足も入れて、どこからもお金もらわず、自分たちで自主制作でしたので、さっさと作っちゃったんですね。
上田: なるほど。  
武田: もう少し、表現の技術が上手にいけば、いままで・・科学というのはこうだと、何秒一コマ、倍率いくつだと、表現の方に被せちゃってどんどんいく、そうではなくて、「生きている生体の呼吸というのはこうだし、消化というのはこうだよ」と、そういうものをストレートに表現していけるのではないかと思って作ったのがこれだったんですね。
上田: うん、そうですね。  
武田: だから、むしろ失敗しているんだと思うんですけども、生きている感じは、一般の人が見て、よりよくわかってもらえるんではないかと思うんです。だから、不思議なことに海外のコンクールに出すと、うちの映画は賞をもらえます。ヨーロッパどこでも。(上田:おもしろいですね) おもしろいなあと思います。日本はそこらへんだめですね。(会場、笑い)
上田: そこらへん、奥の深い問題がありそうに感じますけどね。つまり、「科学」が、科学者が営んで知識を作っていく、科学者の占有物のようなものなんだという、ある決まったイメージで捉えられている。ところが実際は、対象としているのは生きている私たちです。だからやはり、一般の方が見て、ああ、こういうことだったんだと、直感的に入ってくる、そういう映像を提供できなくてはいけない。  
武田: だから、科学に対する国民性が違う。
上田: そうなんです。そこに違いがあるんでしょうね。  
武田: もっと科学というものを通して、わかりあえればいい。というつもりで作ってきたんだけど。ちょっと途中でお手上げしました。(笑い)
上田: 先生、どうでしょうか、そのあたり。研究されていること、学生さんを通じて専門家を育てていくお仕事は当然なんですが、一般の人への、人体とか、生きているしくみとかの認識を広げていくという意味ではどう考えたらいいんでしょう。  
飯野: 今はそういった、開かれた大学ということもありますし、研究成果のできるだけの社会還元というのもありまして、例えば、小中高校生向けに、ひらめき・ときめき・サイエンスとか、そういったことで科学研究費というお金をもらって研究した内容の一部を若い人に公表しましょう、紹介しましょう、研究の一部を体験してもらいましょう、そういったものにも予算がついているので、そういったこともされるようになってきたのかな。大学で閉じこもっているだけでなくて、大学でやっている研究はこういうことですよと、世界にも知ってもらわなくてはならないと考えられるようにはなってきていると思います。
 とはいえ、なかなか本当のところといいますか、研究の理解は難しいところはあるのだと思います。日本人は真面目なので、中途半端にかじるのではいけない。本当にわからないとわかったとは言えない(会場、笑い)みたいな、一般の人もなんとなくでは申し訳ないとか、本当にわからないといけないのではないか、と思うと接しにくいですよね。本当にわかるって専門家の間でも、分野が違うとなかなかすべて本当にわかって討論できるというわけではない。
武田: 体の中の映像を理解する時、やはり、ヨーロッパでは、科学を宗教と一緒に捉えている感じがあるんですね。日本の場合は、科学は科学で別物、特別で、つまり、理解するための手段、道具なんだ。そこらへんはヨーロッパの方が先を走っている気がします。私たちの映画にたくさん賞をいただけますから
上田: やはり、見せ方の問題として、ただ単に事実を写したことに留まらない、アイカムがやっているような映像の作り方をどう開拓していくのか、それはこれから大きいんじゃないかなと思います。  
武田: で、時空キューブで2本作ったんですけど、あのキューブがわかってくれない人がいるんですよね(笑い)。不思議ですね。
飯野:

一般向けとしては、入り口として、難しく考えずに楽しむという意味でいいと思うんです。本当に理解しようと思うと、アウエルバッハとか突然出てきて、わからないと思うんですけど。ああ、こういうのがあるんだ、というイメージを持ってもらうのは必要かなと思います。
 日本人って、高校までの勉強の中で、人間のつくり、体のつくりをあんまり勉強していないんですね。生物の授業で、アメーバだったり、植物も大切だけど、人間のつくりをわかっているかというと・・理系の子でも物理と化学を選択しても、生物は受験に不利だと選択しない子が多くて、医学部に来る子でも、意外なほどに人体についての基本的な理解が低いんですね。それはよろしくない。人間なんだから、人間について全体を知っている必要はある。その中で、こういう映像作品は、ものすごくインパクトもありますし、大切。見ておもしろいというのは、必要なんじゃないかと思います。
武田: 映画の場合は、こことここをわからせようと思って作ると、省略しても、そこのところを表現できるんですね。ところが、日本の場合、科学というのは、表現というものからは乖離していて、映像そのものは受け取るんだけど、こちらの作った映像表現は科学的ではない、と理屈だけで拒否する。
同じテーマで作っている映像を見てくれともらうことがあるけど、歯がゆいというか、もらいたいくない。国の機関に入っている作家なり、表現者が率先して、こう作りなさいと押し付けてくる。
上田: だれが表現者なのかということですよね。アイカムの映像を初めて見た人は、映像の迫力に圧倒されるんですけど、内容が専門的にかなりレベルが高い。今、飯野先生が言ったように、小中高校で体のことをほとんど習っていない人がいきなり見た場合に、中身の理解と映像からくる迫力の、そのギャップを感じるのではないかな、とも考えられます。そういう意味では、私はこういうNPOの活動をしていても痛感するんですが、例えば、日本人の半分がガンになる。でも、あなたは小中高でガンのことを習ったことはある? と聞いたら、いやそんなのは習っていませんよ。当然、そういう答えが返ってくる。それは非常に奇妙なことで、やはり小学校の時から自分の体のしくみがどうなっているかをちょっと知れば、ものすごく興味をもつ対象になるはずなんです。人体や病気のことは理科の中心として教えていたらいいのではないかなと思うんですけどね。  
川村: 「生物」は入試でも不利だし、苦手だからやらないと言われるのはなぜかというと、覚えなければならないことが多い、というんですよ。結局、用語をいっぱい暗記しなければならない。記憶力の科目だと思っているらしい。その前に、まずは、血液はこういうふうにして流れているんだ、そういう実感の方がよっぽど大事だと思うんです。たしかにいろんな用語が出てはくるけど、他に言い換えようがあるのか、といったら無い。
 今日もご案内しているけど、アイカムではドーム映像というのをやっているんです。これもキューブの発展形のようなものですが、空気でふくらませるエアドームの中に入って、体の中の世界、細胞の中の世界に入ったように映像体験してもらう。そうすると、子どもたちは、映像の迫力でおもしろがってみてくれる。そして、なんとなく感じてくれる。大人は、人にもよりますが、真面目な大人こそ、「これを子どもに理解させるのは無理だ、こんな難しいのは無理だ」といいます(笑)けど、子どもたちは喜んでみています。その入口が大事なんじゃないかと思います。
上田: そういう意味で『消化』などは本当に、先ほど、胃が痛いとか、おなかが痛いという人がすごく多いと言われましたが、なぜなんだろうと興味をもちさえすれば、今日の映像などはすごく興味のもてるものになると思います。今後も先生のように研究なさっている方と表現して作っていく方とがもっと近づいてやっていったらいいのではないかとつくづく思います。
呼吸も消化も、体の基本的なはたらきに焦点をあてて、今まで積み上げられた知識をどういうふうに映像としてどういうふうにストーリーを作ることができるかという話ですよね。そのあたりを、日本では今のところアイカムしかやっているところはないという気がします。専門家も力を貸したいという方はいらっしゃると思うんですけど。手がけていきたいですね。
こういう映像を教育に使っていくというのはどうですか?  
TS: 難しいですね。
上田: 難しいですか?  
TS: あのー・・細かすぎる。(笑い)
上田: なるほど、いきなりだと先生にとっても難しく感じてしまう。そういうものですかね。  
TS: かなり教え込まないと見れないですね。
上田:
そのへんが、先ほど子供と大人のギャップの話で出てきたところに関連しますよね。学生さんだから、なんでも理解しなくてはならない。覚えなくてはいけないと思ってしまうという面がきっとあるんでしょう。
川村: でも、どなたも病気になると、必死になってガンのことも調べてみたりしますよね。だけど、病気になる前に、自分の体のことをもうちょっと知っていてもいいはずですよね。
上田: そうですね。映画のラストで、血液の流れが悪くなってきて、という話があって、ああいうリアルな映像を見るとドキッとさせられるのですが、消化管が老化するとどうなるんですか。  
飯野: 体全体と同じですが、全体の働きが落ちてきて、運動も徐々に落ちてくる。内部にある神経も数は減ってきます。そういった変化は起こってきます。
上田: そうすると、食べ物も受け付けない、ということが起こってくるんでしょうか。よく聞くのは、昔はお肉をよく食べていたけど、受け付けなくなってきたとか・・でも年をとるとタンパク源は大事だとも聞きますが。  
飯野: 消化吸収の能力が落ちてくると、ちょっと食べ過ぎたり、お肉が重くてもたれてしまうのだと思いますけど。ただ、栄養素として、タンパクは必要ですね。特に高齢になって食が細くなると、痩せている方では、低栄養という問題も出てくる。筋力が落ちてしまうと、自分の体が維持できない。寝たきりに近づいてしまうので、そこは非常に大切なところですね。
TS: 話がもどってしまうんですが、細かいことで、胃腺の口が閉まってしまったら、壊死しますよね。そういう胃潰瘍はないのかということです。
これまでの説明だと、ピロリ菌が上を食いちぎってしまうから、粘膜表面が裸になり、胃酸にさらされて穴が開いてしまうということでしたが、今の映画を見ていたら、なんかの刺激で胃腺が詰まってしまったらどうなるんだろう。乳腺細胞みたいに平滑筋に近い細胞ではないのでそうはならないかもしれませんが、中で壊死して、爆発するようなことはないのかな。そういう全体が黒くなるような潰瘍とか、胃病変はないのかな。
飯野: そういう視点では見ていないのですが、映画の中であったように、胃腺の細胞は粘液の細胞と一緒に剥がれ落ちるので、だから通路という形ではずっと保たれるのではないかと思います。
TS: そうしないと詰まって乳腺炎みたいになってしまいますからね。
上田: 細胞が剥がれ落ちながら消化管は維持されているというわけですからね。それではそろそろ時間となりましたので、ここまでにしたいと思います。飯野先生、ありがとうございました。 (拍手)  
イベント感想
YMさん:




OMさん:
身体の中で、非常に効率よく出来ていてすごいなと思いました。
とにかく映像がきれいで・・とても楽しかったです。

非常に面白く勉強になりました。人体のイラストはできればアニメーションやカラーの方がわかりやすくいいです。最初と最後のイメージ映像より、もっと消化管に関わる肝と腎の関連などを腸内細菌の働きとかも拝見したかったです。消化管と病態は潰瘍くらいしか出て来ませんでしたが、癌とか、身近な症例との関連もみせてほしかった。例、抗生物質の摂取で腸内菌叢が乱れ、パーキンソン病との関わりが論じられているが・・
MMさん: 初めてみたので他にもいろいろ見たいです。いろいろなお話が聞けてよかったです。
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