●アイカム50周年企画「30の映画作品で探る”いのち”の今」 第4回 アレルギーと炎症 細胞映像で謎に迫る
<2018年10月27日(土)>
上田:
アイカムの50周年を記念しての映画上映会、今日で4回目になります。私は司会進行役を務めますNPO法人市民科学研究室の代表の上田です。今日のテーマは、「アレルギーと炎症 細胞映像で謎に迫る」です。アレルギーについては、皆さん、食物アレルギーやアトピー、身近なところでは花粉症も、ここ20年ほどで身の回りでアレルギーの人が増えたなと感じていらっしゃるのではないかと思います。
でも実際のところ、私たちが中学・高校・大学も含めてアレルギーについて、多少なりとも勉強したことがあるかといえば、普通ないと思います。今の医学や生物学がこの問題にどういうふうに迫っているかを考えてみたいと思います。
アレルギーが炎症だとすれば、炎症に関わる細胞を克明に追ってみて、その細胞の様子から何かわかるのではないか。ということで、今日はアイカムの3つの短い作品を追ってみたいと思います。そんなに長くない映画なんですが、実はとてもレベルが高い。専門家向けに作られた映画なので、いきなりというのも何ですので、今日はアレルギーの分野で大きな仕事をされて来た研究者で、国立成育医療研究センターの斎藤博久先生をお招きしています。
斎藤先生から免疫・アレルギーのごく初歩的な話を少ししていただいて、その知識を持っていただいて、それから映像を見てみたいと思います。
進め方は、川村さんの方から少し映画の概要を説明してもらい、映画を見て、質問を受けて、先生にもコメントいただく形で進めていきたいと思います。
では、先生、よろしくお願いします。
斎藤:
スライドが8枚ほどあります。先ほど試写しましたら、レベルの高い映画なので、先に説明させていただきます。
アレルギーとは何かというと、免疫反応の一種で、自分の体に不利な場合をアレルギー反応と呼ぶ、そういう定義なんです。同じもの(細胞や物質)をだいたい使うわけです。アレルギー反応は免疫反応と同じものですが、アレルギー疾患にはどういう病気があるかというと、代表的なのは、アレルギー性鼻炎が今日本で一番多くて、4000万人くらいです。花粉症もこれに含まれます。アレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎は花粉症の代表的な症状です。アレルギー性鼻炎というのは臓器側からつけた名前で、花粉症はアレルギーを起こす抗原の方からつけた名前です。それで、蕁麻疹という病気、臓器の方からつけた名前で蕁麻疹、これは食べ物で起きれば、食物アレルギーです。
今日のお話は、ほぼ気管支喘息の話です。
これは気管支の上皮、気管支の粘膜です。これがアレルゲン、抗原ですね。これが入ってくるわけです。普通はここタイトジャンクションと言ってしっかり閉まっていて入らないんですが、風邪ひいたりして緩んでいると、ダニの糞や花粉など入り込んで、これが抗原提示細胞に最初に取り込まれる。この抗原提示細胞が、免疫の司令官であるT細胞に「怪しい、見知らぬ奴がやって来ました」と情報を伝える。その刺激がなんども来ていると、このT細胞がさらに「怪しい奴が来た」という情報を伝える。IL-4とかIL-13などを出し、こちらのB 細胞に働く。B細胞は、IgEを作るには、T細胞からIL-4とIL-13がでなければならない。そうして、IgEができると、マスト細胞にくっつくわけですね。
こういう状態を「感作されている」というんですが、マスト細胞にIgEが結合した、くっついた状態。ここにアレルゲン、抗原がまたやってくるとマスト細胞にスイッチが入って、マスト細胞が顆粒を外に出す。脱顆粒というんです。顆粒の中にヒスタミンという物質がたくさん含まれていて、かゆくなったり、血管を広げたり、蕁麻疹やくしゃみを起こしたり、同時にマスト細胞などの膜でロイコトリエンという物質が合成されて出される。このロイコトリエンは気管支をギューっと縮める物質なんです。
それと、しばらくすると、数時間経って、いろんなサイトカインという物質を出すんです。この画面はロイコトリエンによって、気管支がギューっと縮んでる様子ですね。この画面はサイトカインの作用によって、血管の中から好酸球がぐうーっと引き寄せられて、たくさん出てくる。最初にアレルゲンがマスト細胞を刺激してから数時間後、好酸球がたくさんやってくる。好酸球の中にはプロテアーゼ、タンパクを壊す酵素がたくさん含まれていて、本来は寄生虫を壊すために使われるはずなんですが、寄生虫がいない場合は自分の組織を傷つけてしまう。こうやって、気管支の粘膜がベロンと剥がれて、神経がむき出しになってしまうから、ちょっと冷たい空気を吸っただけで、ゼイゼイヒューヒュー、喘息になってしまう。こうやって喘息って出来上がる。
これは好酸球を赤く染める染色ですが、好酸球って、喘息の患者さんやアレルギーの患者さんで増えているんです。平均値が、白血球全体の1%〜2%ですから、アレルギーの人で5%くらい。それでも好中球の方が白血球の比率としては多いんですが、なぜか喘息の患者さんの気管支の組織の中には好酸球だけが選択的に寄ってくる。そういう仕組みがあるんですね。これも後で映画でやりますが、喘息の本態は好酸球炎症ではないか。というのが30年ほど前からわかって来たわけです。
喘息発作というと、即時型反応、抗原、アレルゲンを吸入してから10分ほどで起きる、気管支がキュッと縮む、そういう反応だけであると、教科書的には考えられていたわけなんです。ですので、30年前までは、喘息の薬は気管支を広げる薬ばかりだったんですよ。それだけではなくて、マスト細胞とか、アレルゲンで刺激されたリンパ球がサイトカインを出して、好酸球がそれに引き寄せられてやって来て、その好酸球がいろんな悪さをする、アレルゲンを吸入してから6〜24時間の反応です。
実際、救急外来で喘息発作の患者さんを何百人も診て来ましたが、即時型反応、教科書で見るような5分後に発作を起こすような患者さんは一人しか見たことがありません。もちろん家ではそういうことが起きるんでしょうけど、救急外来でくる患者さんの99%は、こういう感じですね。救急外来に来られる場合、猫に舐められて発作を起こしたとか、そういう感じですかね。治療の対象の大部分はこちら、好酸球の炎症。好酸球の炎症を減らす一番いいお薬は、ステロイドなんですね。ステロイドの全身投与は、骨やいろんなところに副作用が出てしまうので、30年ほど前に作られた吸入ステロイド薬、これは構造式が全然違うステロイドで、局所に止まりやすく、全身に移行するとすぐに壊れてしまう。要するに、副作用が少なくなるように構造式を変えたステロイド薬が使われるようになって来たわけです。
1995年より前は発作が起きてから気管支を広げればいいという治療が主体だったけど、1990年代からだんだんこういう吸入ステロイド薬を主体とした、喘息は遅発反応、炎症反応であるとわかって来て、吸入ステロイドをずっと続けて予防しましょうという治療になって来た。それが広まって来て、町のお医者さんにも治療管理ガイドラインで推薦して、過去20年で、喘息で亡くなる患者さんが4分の1以下になっています。
上田:
先生、ちょっといいですか。私の友人も喘息患って居て、結構しょっちゅう、吸入ステロイドをシュッシュッとやっていますが、あんなに頻繁にやって大丈夫なものなのでしょうか。
斎藤:
しょっちゅうやっているのは、多分吸入ステロイド薬ではなくて、ベータ2 (β2)刺激薬で気管支を広げる薬ではないかと思います。β2刺激薬をしょっちゅうやるのは危ないですね。だからそうならないように、吸入ステロイドの量を増やすとか、多分定期的に吸入ステロイド薬を使っていないのではないかと思います。必ずβ2刺激薬をやる時にはステロイド薬の合剤とか、ステロイド薬を別に使わないと危険です。吸入ステロイド薬は、発作を止める薬ではないので1日2回で十分なんですよ。朝と夜、あるいは1日1回でいい薬もあります。
IgEを発見された石坂先生のおかげで免疫学は過去50年急速に進歩しました。この7月に亡くなったんです。私も弟子の一人ですが、IL-6の岸本忠三さん、サプレッサーT cellの多田富雄さん、優秀なお弟子さんを育てたというお話です。石坂先生の話は、話し出すとキリがないから、この辺で上映会に移りましょう。
上田:
それでは最初の作品『炎症細胞 気管支喘息の新しい視点』、17分の映画です。
川村:
1991年の作品で、鳥居薬品さんとわかもと製薬さんがスポンサード。今、先生のお話伺って、まさに30年前、喘息研究、治療の変わり目に作られた映画ですね。当時、とにかく今の最先端を映像化してくれということで、一生懸命背伸びして取り組んだ覚えがあります。中に出てくるICAM-1の蛍光染色も、指導いただいた奥村先生には最初「素人が絶対にできっこないよ」と言われて、でも、やらせてくださいと頑張って、当時初めて染色したものです。
上田:
ICAM-1は細胞間接着分子なんですね。アイカムの社名の由来も?
川村:
関係あります。
■ 映写 1991『炎症細胞 気管支喘息の新しい視点』 17分
斎藤:
この時はシネ・サイエンスという社名だったんですね。
川村:
そうです。1992年で創立25周年を機に社名を変えようという話が出て、前年にこの映画でICAM-1を染め出して、評価されたのもあって、アイカムという社名にしたら、それまでシネ・サイエンスで50音順のだいぶ後ろだったのが、アイカムのアで一番先にくるようになった、というメリットもありました。
上田:
斎藤先生、「炎症細胞」と言った時に何か一つの細胞をイメージしてしまうのですけど、複数の種類の細胞で、一連繋がりがあるわけですよね。
斎藤:
主に好中球、好酸球、リンパ球ですか、普段は組織には存在していないんですが、マスト細胞が活性化した後に、血管から出てくるんですね。典型的な喘息の重症な人は、好酸球が選択的に来てしまう。ICAM-1というのは好中球と好酸球とリンパ球を皆通してくれるのですが、喘息の重症な人ではICAM-1の他に、VCAM-1というもう一つの接着分子が出て来て、それは好酸球を選択的にくっつける役割ですね。
それともう一つ説明しておきたいのが、免疫グロブリンですね。免疫グロブリンはIgGとIgM、IgA。あとIgDというのもありますが、これは分化の過程で出てくるものであまり役に立たない、無視してもいいです。それとIgEですね。IgEはめちゃくちゃ少ないんですが、マスト細胞と好塩基球という細胞に選択的にくっついて、アレルギー反応を起こす免疫グロブリンです。先ほどお話した石坂公成先生が発見されました。IgEをブロックする抗体医薬も作られていて、オマリズマブ、ゾレアという薬ですが、喘息に非常に有効で広く使われます。
それでIgG、IgM、IgAとIgEの比率は、10万分の1ぐらいの比率です。IgG、IgM、IgAはものすごく多いんです。血液の成分中の1%以上2%近く、血液中ではIgGが一番多いですが、粘膜組織ではIgAが一番多い、粘膜組織の免疫グロブリンではsecretary IgA(分泌型IgA)が多いです。
映画を見て、それなら、IgAをなくせば、好酸球の活性化を止められていいのではないか、と思った方がおられるかもしれませんが、それはありません。IgAは感染防御にとても重要なんですね。IgAを無くしたら、免疫不全で長生きできません。IgAにこだわっていた理由が、この少し前にフランスの有名な先生が好酸球の活性化がIgEによって起こると発表して、それが定説となりつつある状態だったところに、この映画の指導学者の一人、三重病院小児科の藤澤隆夫先生 (現在は三重病院の院長、小児アレルギー学会理事長)が、アメリカに留学していた時に、secretary IgAが好酸球の脱顆粒を起こすと発見したんです。ちょっとそれが強調されて目立ってしまうのだけど、何にしても、IgAをなくせばいいということにはならない。メカニズムとして新しい発見したことで強調されているけど、いずれにしても好酸球が重要であることは間違いない。
好酸球は割とステロイドには弱いんです。好中球に比べてもからきし弱くてすぐ死んでくれる。全身に回らない吸入ステロイドが主役になったというのはそういうことも大きく影響しています。
上田:
脱顆粒の現象が、強調されていましたが、顆粒の中に、サイトカインとかいろんなものが含まれていて、それらがいろんな反応を起こして行くということですか。
斎藤:
それはちょっと違っていて、サイトカインではなく、好酸球顆粒の中には組織を壊すタンパク分解酵素などが含まれています。その作用で気管支の粘膜が傷ついてしまって剥がれ落ちたり、三作目に出てくるリモデリングという現象、つまり傷ついた組織を無理やり修復するため繊維がたくさん出てきて、硬くなってしまう。喘息の患者さんの肺は、だんだん硬くなってしまう。喘息発症の初期の段階は、気管支はキュッと縮むけど、発作が終わると元に戻る。だけどだんだん硬くなってきて、分厚くなって、それをリモデリングという。好酸球の中の顆粒はそれに関係しているんです。
好酸球はそれだけでなくて、気管支を縮める役割をするロイコトリエンをたくさん分泌する。遅発反応の喘息発作にも関係している。
上田:
細胞同士の繋がりとか、どういうメカニズムで全体ができているか、といったことが掴みにくいと思いますが、2本目、3本目見て行くうちに、わかるかもしれません・・・。
川村:
アイカムとしては、この「炎症細胞」の時に初めて本格的に走査型電子顕微鏡を入れて撮影しました。
次の「マスト細胞」は1994年に日本ベーリンガーインゲルハイムさんと、三共さんの共同で、こちらは順天堂大学の奥村先生を中心に作られました。1作目は「炎症細胞」で、アレルギーに関わるいろいろな炎症細胞が、英語的に言えば複数形の炎症細胞ズが、反応するのですが、2作目はその引き金を引く「マスト細胞」がタイトルになっています。そのマスト細胞がどんな風に脱顆粒するのかなど現象を追いかけたものですが、どう映画をまとめていこうかとなった時に、監督の武田が、先生方がこれを見て話をするという形はどうかと提案したところ、羅先生が、それだったら若手のホープに声かけようと、斎藤先生や中畑先生に呼びかけて、3人で出演してくださったんですね。
当時はフィルム時代ですから、映写機は縦方向にフィルムが走りますが、これはスティンベックという、横方向にフィルムを送ったり戻して見られる装置で映像を見てもらいながら、同時録音しました。そのスティンベックの機械音がノイズのように入っています。
■ 映写 1994 『マスト細胞 アレルギー性炎症を追って』 20分
斎藤:
話している内容は古くなっている感じはするんですが、映像自体は、今でも時々、国際学会でも使うんですけど、「ウワーッ」ってみんな驚いてくれます。
サイトカインは少し新しいものが見つかったりしていますから解説は変えなくてはいけないけど、映像はそのまま真実ですから。
上田:
皆さんの方から何かたずねてみたいこと、不思議に思ったことなどありますか?
免疫の炎症のメカニズムとして、研究者が、おそらくこういう細胞が、こういう物質がこういう作用をしているという自分のストーリーを作るわけですが、アイカムが撮ったような映像で、細胞が集まってくるとか、顆粒が出てくるとかが、如実にわかり、そのストーリーが検証されている感じです。
研究者たちが自分のストーリーを作るときに、こういうものを頭の中に描いているのかどうか。それともアイカムのような映像を撮って、それを検証し裏付けることになるのか。映像で撮る位置付けを語っていただけたら。
斎藤:
論文を書く時、ストーリーを組み立てないと書けないし、読んでも面白くないと、査読者に蹴られたりするので、私は、ストーリーは必ず作っているんですけど、私の場合は、結構、映像的なことが好きなので、頭の中に想像して、この細胞がこう働いて、というイメージを描きながら論文は書くようにしています。ですので、こういう真実の映像があると本当にやりやすいですよ。
原則はこれなので、細かい分子は変わるかもしれないけど、これに沿って、非常にストーリーを作りやすいです。今でも助かっています。本当に感激しますよ。外国人も。学生さんたちも、喜ぶしね。
でも三人の話はちょっとオタクでしたね。(笑い) あそこまで話さなくてもいいんじゃないかと。
上田:
三人の先生方が登場しますが、同じアレルギーをやっていても、それぞれ少しずつ研究の中身は違うんですか。
斎藤:
そうですね。中畑先生は、特に血液学のご専門で、いろいろ造血幹細胞を研究された。造血幹細胞が自分で自分と同じものを作ると同時に、好中球や赤血球になる細胞を作るということを世界で初めて実証した人です。その過程でマスト細胞がたくさん出てきたからついでにマストcellも研究されていると。羅先生はIgEのレセプターを世界で初めてクローニングされた。
参加者HH:
私は花粉症なもので教えていただきたいのですが、抗アレルギー剤と抗ヒスタミン剤がありますが、どこが違って、炎症のどこを止めているのか、教えてください。
斎藤:
抗アレルギー薬というのがこの当時、よく使われていて、その名前が残っているんですが、今の抗アレルギー薬はほとんど抗ヒスタミン薬です。ロイコトリエン拮抗薬はありますけどね。で、花粉症で一番使われているのが抗ヒスタミン薬です。ヒスタミンはマスト細胞の顆粒の中にたくさん入っています。マスト細胞が顆粒を外に出すと、ヒスタミンも出てきて、鼻水が出たり、目が痒くなったりします。これはヒスタミンの作用です。そこで、抗ヒスタミン薬を飲むと、その作用を抑えます。
参加者HH:
ヒスタミンの産生を抑えるのではないのですね。
斎藤:
産生を抑えるのではないです。ヒスタミンの作用を抑えます。
MS:
アイカムのスタッフですが、IgEは、IgGやIgAに比べて非常に少ないという話でしたが、アレルギーの患者さんはよく医者から「あなたはIgEの値が異常に高い」と言われますが、どのくらい増えるのですか?
斎藤:
何と比較して増えているかという問題ですよね。大きさは非常に小さくて、オングストロームの世界ですから。マスト細胞1個あたりIgEが10万個ぐらいくっついているんです。IgEは正常値が血液1mL(ミリリッター)あたり50ng(ナノグラム)以下です。ナノはマイクロの1000分の1ですから、50g の10億分の1ですか。他のIgGは1mLあたり15mg(ミリグラム)。10万倍以上違いますね。
アトピー性皮膚炎で「IgEがこんなに増えていますね」という患者さんでも、500ng(ナノグラム)程度ですから、アレルギー疾患ではマイクログラムまで行くことは少ないです。10マイクログラムを超えるとこれは別の病気「ハイパーIgE症候群」です。
上田:
今の診断では即時にそんな微量な測定ができるのですね。
斎藤:
今はできますが、50年前はできなかった。で、皆さん、なかなか見つけられなかった。で、石坂先生だけが先に抗体を作ってしまえ、と逆転の発想で見つけたんですね。
上田:
それでは3本目の映画を見ましょうか。先ほど、斎藤先生からお話のあった、気道のリモデリングという現象について、撮った映画ですね。
川村:
これは2001年ですから、さらに7年後、アストラゼネカさんがいわゆるロイコトリエン拮抗薬を出すにあたって、どんな映像でアピールしたらいいかというご相談があって、獨協医大の福田先生を監修に頼んで、実験を計画し、ある程度撮りためてから、どうまとめようかということで、イギリスからホルゲートさんという有名な先生が来日する機会に、福田先生と対談する形でまとめたらどうだろうということになりました。
■ 映写 2001 『気道のリモデリングを探る』 14分
上田:
もちろん、薬の効果を検証する映画ということになるわけですが、喘息のもう一つの重要な要素である気道壁が太くなってしまうという現象を解き明かしている映像でもあると思います。
参加者HH:
実験の方法について、肥厚する前にLT(ロイコトリエン)ブロッカーを入れているとなると、肥厚を抑制しているのであって、喘息で肥厚したものを治療するのとは話が違うのかなと思ったのですが。喘息の起きる前に投与しておく?
斎藤:
肥厚の抑制ですね。喘息も軽いうちは、気道はぎゅっと縮んで、完全に元に戻る。それが何十年も喘息であると、腕立て伏せをした筋肉のようにだんだん太くなって、気道が広いた状態でももう狭くなっている。機械的に、もうそうなってしまうとダメです。ああ、ダメですなんて言っちゃいけないんで、(笑) 今、治療があって、気管支鏡を中に入れて熱をかけると、気管支の平滑筋は熱に弱くて死んでしまうので、平滑筋だけ殺してしまう治療もあるんですよ。
参加者HH:
ハイパーサーミアですね。
斎藤:
はい。予防としても、単独の薬ではダメです。ここではLT(ロイコトリエン)拮抗薬がとてもよく利いたように描かれていますが、しょっちゅう、喘息発作が起きていれば、腕立て伏せの筋肉のように太くなるのでコントロールしなければ無理なんですね。いろんな薬を使って、喘息をコントロールすれば、少しはリモデリングが防げるという程度ですね。
斎藤:
そうですね。LT拮抗薬もその選択肢の一つだろうと。
参加者SH:
そのLT拮抗薬と比べられていたテオフィリンというのはどういう作用の薬なんですか?
斎藤:
テオフィリンはもともと気管支拡張薬です。今でも使われていますが、メジャーな薬ではなくなりました。テオフィリンも弱いながらリモデリングの抑制効果があることがわかってきましたが、弱いのでそれを目的にはあまり使われていない。テオフィリンをずっと使うことはないと思います。ただ、ガイドラインの選択肢の一番下の一つです。昔はいい薬がなかったので、テオフィリンは治療の主役でした。
使われていますか?
参加者SH:
いいえ、でも聞いたことのあるお薬だなと思って。
斎藤:
昔からよく使われた喘息治療薬ですからね。30年前の治療の主役でした。
上田:
この映画を撮った当時にはよく使われていたのですね。
斎藤:
それとテオフィリンにもリモデリングに少し作用があるという論文が出て注目されていた時期じゃないかな。
上田:
今日はアレルギーの話ですが、たぶんみなさんも身近なところで悩みを抱えておられるかもしれませんし、ご質問いただければと思います。あるいは全然違う角度から、例えば、今年のノーベル賞に本庶佑さんが決まりましたが、実は日本人の中で免疫の分野で画期的な業績を上げられた方は少なくないんですよね。免疫の研究についての質問でも構いません。
参加者SM:
外国人の友達が日本に来て、タイ人とか黒人とか、花粉症になっているのだけど・・
斎藤:
それは日本に来て何年くらいの方?
参加者SM:
半年とか1年で、でも国に戻ると治ると言っていたんですが、花粉症って、日本人特有のものかと思っていたけど、そうではないみたいで・・
斎藤:
半年ぐらいでなっちゃいますか。半年で花粉症になるというのは、なかなかいないと思いますが、スギですよね。確かに、スギは日本と、韓国の一部にしかないということですから。それまで感作されてなくて、猛烈に感作されて半年でなるというのは、まあなかなかないですが、ありえないことではないですね。
北海道に暮らす人は、スギ花粉症はほとんどいないですね。本州に移転して2〜3年でスギ花粉症になるということはありますが、遺伝的にスギ花粉症になると決まっているわけではないので、環境にスギ花粉が多いかどうかで決まる。
だから理論的には不思議ではないですが、半年でというのはすごい早いですね。アレルギー体質なんですかね。
参加者SM:
留学生の宿泊施設があって、そこの人たちの話だったんですけど。
少なくとも日本人特有のものではないということですね。
斎藤:
本州にしかスギ花粉は存在していないので、たまたま日本人に多いだけで、引っ越して来て、数年たてばほとんどなってしまう。血液検査すると、若い人の抗体陽性率は60〜70%ですから。ならないほうが少ない。エコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)の出生コホート調査で、10万人の妊婦さんの血液を調べたところ、まず症状としては5割が何らかのアレルギー、ほとんど花粉症ですが、血液検査だと75%が陽性です。スギに関して6〜7割、ダニもそうですね。IgE抗体陽性の方が標準的といえます。
参加者SM:
歴史的に変っているんですか。
斎藤:
40年くらい前は、信頼性はそれほど厚くないが、データ取り始めて、ほとんどIgE抗体陽性の人はいなかった。スギの花粉が少なかったというのが一番の理由です。もう一つは、小さい時に、不潔な環境で育つとアレルギーを抑える免疫細胞が発達してくれるので、一生アレルギーから免れるということがあります。 (会場: ああ、そうなの (笑い))
参加者SM:
藤田紘一郎という寄生虫の研究者が「昔の人は寄生虫を体に飼っていたから、アレルギーにならなかった」と言っているのはある意味で正しいんですか。
斎藤:
いや、寄生虫は間違っています。(爆笑) それは調べた先生がいて、宮崎の養豚業者には寄生虫が陽性の人が結構多いんですが、その陽性の人と、そうじゃない人を比較したら、むしろ花粉症が多かったくらいです。だから、寄生虫だけではない。もちろん、寄生虫もそれを抑える要因にはなっているかもしれませんが。主に、ばい菌、バクテリアの方が強い。
でも、それは小さい時でないと意味ないです。大人になってから、汚い生活をしても遅い。(爆笑)
上田:
なるほど、大人は清潔に、ということですね。
以前から不思議に思っているですが、ごく微量のアレルゲンに反応する人もいれば、かなり浴びてもそうでもない人もいる、しかも曝露が多ければ発症が早くなるのかどうか、とか。その辺が掴みきれないなと思っていまして。
斎藤:
今、不潔な環境で暮らしている日本人はあまりいないので当てはまりにくいのですが、典型的なのは、ヨーロッパの牧畜農家、牛や馬と一緒に暮らしている人たちは、牛馬の糞の中にたくさん細菌がいて、免疫を刺激する物質をたくさん、小さい時から吸い込んでいるので、そういう環境で育った人は、アレルギーを抑えるTh1細胞が発達していて、一生アレルギーから免れるんですよ。そういう体質になる。(会場:なるほど)
ですので、そういうところで育った人は、どんなにアレルゲンを浴びようがアレルギーにはならない。(会場: すごい!)
そうでなければ、微量なアレルゲンを暴露しただけでもアレルギーになってしまいますので、特にアレルギーになりやすい人というのは、アトピー性皮膚炎がある人は、皮膚から入り込む。寝室に残っている微量な花粉でも花粉アレルギーになってしまうし、ピーナツのカスみたいなものでもピーナツアレルギーになってしまうし、卵アレルギーもそういう原因でおきます。
上田:
そうすると皮膚の常在菌というのが、重要なファクターになりますか。
斎藤:
アトピー性皮膚炎があると、免疫細胞が表皮から突起を伸ばして、取り込んでしまう。吸い込まなくても、寝室の埃の上をゴロゴロ転がっただけで、微量な卵の抗原やピーナッツの抗原は普通の家庭環境、家の埃の中に普遍的に存在していますから。ダニよりも多いぐらい。ピーナッツ食べていない家はともかく、イギリスやアメリカなどピーナッツバターを大量に消費している国では、測定するとピーナッツ抗原量はダニ抗原量の10倍はある。(会場:-ほおー)
そういう環境でアトピー性皮膚炎がなければ、皮膚から吸収しないので、ピーナッツアレルギーにはなりにくいのですが、アトピー性皮膚炎があると、ほぼピーナッッツアレルギーになる。ダニアレルギーにもなる。アトピー性皮膚炎はいろんなアレルギーの呼び水になる。特に赤ちゃんの時のアトピー性皮膚炎は要注意です。牧畜農家で育てばアレルギーになりにくいけど、清潔な環境でアトピー性皮膚炎を発症してしまった赤ちゃんは、わずかなアレルゲンでアレルギーになってしまいます。
MS:
小学生がピーナツとか、小麦とかアレルギーのあるものを食べてその日のうちに死んでしまうニュースを聞きますが、これは最近のことなんですか。
斎藤:
なぜかはわからないんですが、食物アレルギーに関しては21世紀に入ってから増えています。花粉症も増えていますけどね。喘息やアトピー性皮膚炎は頭打ちになっていますけど、食物アレルギーは増えています。アナフィラキシーを起こす子もここ数年で2倍とか増えています。
ようやく、小さい頃のアトピー性皮膚炎の状態を早く治せば、それが減るのではないか、というのがだんだんわかって来たところです。エビデンスとしてはまだ十分ではないのですが。そういう啓発・指導が、赤ちゃんが生まれた時からスキンケア、保湿剤を塗りたくるとか、保健所の指導で行われるようになっています。ですので、これからひょっとすると減ってくれるのかもしれない。
MS:
今、パン屋や食堂でも、これにはアレルゲンが何と何が入っていると、ものすごい表示がいっぱいで、これなら何も食べるものがないじゃないかというぐらい、これは要注意と書いてあるけど、昔、そんなの何も書いていなかったけど、それを食べて誰も死ななかったじゃないかと、とても不思議なんです。
斎藤:
はい、何もアレルギーのない普通の人は、これは危険だから食べるのをやめようというのは間違いです。普通に食べないと、むしろアレルギーを増やしてしまう。口から入ると、アレルギーを抑える方に働くし、皮膚の赤くただれているところから入ると、アレルギーを悪くするんです。
あの表示は、あくまでも、食べて何かアレルギーが出たような人たちを対象に、死なないように表示しているんです。そういう法律で決められたことでやっているんです。それが目的で、一般人を対象にしたものではないんです。
食物アレルギーで亡くなる方は年間一人か二人なんですね。ただ亡くなるのがお子さんだったりして、かなり悲劇的なニュースになるので目立ちます。例えば、医薬品では年間20〜30人ほど死んでいますし、蜂に刺されて死ぬ人もそのくらいいます。
MS:
アレルギーの子がいたずらで背中にチーズを入れられて、その日のうちに死んだというニュースがありました。アメリカかどこか。
参加者SM:
イギリス、ロンドンで13歳の少年、ショック死のようですね。生まれつき重度のアレルギー体質で、アトピー性皮膚炎、喘息など、小麦グルテン、乳製品、ナッツなどにアレルギー。
斎藤:
それは知らなかった。かなり特殊な状況ですね。
参加者ST:
私は気管支喘息ではなくて気管支炎のようですが、耳鼻科に行くと、すぐ吸入、吸入と言われます。別の本を読むと、あまり吸入をやっていると心臓が弱くなるという記事があったんですが、気管支炎でも治らないよとお医者さんには言われるんです。実際、これから年をとっていくし、吸入した方がいいんですか。
斎藤:
吸入といっても、どの薬を吸入するかによっても違うんですが、きっと気管支を広げる薬なんでしょうね。薬の種類を聞かないとなんとも言えませんが、なんだろうな、いろんなお医者さんがいるんで・・他のお医者さんにもセカンドオピニオンを聞いてみた方がいいかもしれません。
ネブライザーだと家にはなくて、お医者さんに行かないと吸入できないので、そのくらいの頻度であれば、年に何回かでも、それで心臓が悪くなって死ぬことはないです。手元でシュッとやる吸入。あれを1日何回もやって亡くなる人は結構いたんです。あれは絶対にやめましょうという啓発活動はしています。
上田:
少し話は変わるんですが、石坂先生をはじめ日本の免疫学の流れといいますか、本当に画期的な業績が続いていますが、そもそも日本が免疫に強くなったというか、こういう人脈を生んで来たのにはどうわけがあったのでしょうか。
斎藤:
それは、石坂先生でしょうね。最初のお弟子さんが多田富雄先生、サプレッサーT 細胞を千葉大に帰ってから発見された。谷口先生や奥村先生を育てて、谷口先生や奥村先生もいろんな先生を育てた。その次に有名な先生は岸本忠三先生、阪大の総長された方で、IL-6を発見、リウマチの薬のアクテムラの開発でよく知られた、ノーベル賞になってもおかしくない人ですよね。その人が育てたのが審良静雄先生。Toll様受容体(Toll Like Receptor, TLR)をたくさん発見した人なんですね。2011年にノーベル賞がToll Like Receptorの発見で二人の方に授賞されたのですが、本来、審良先生が入っているべきだったのに、なんでなんだろうなと思いました。論文の引用数、世界一を何年も続けた人なんです。すごい先生。
だから、直弟子から孫弟子まで入れると日本の免疫学会の評議員の9割ぐらいが石坂先生の門下。坂口志文先生、レギュラトリーT細胞(調節性T細胞)を発見してノーベル賞に一番近いと言われている人も石坂先生と同じ施設で働いていて、いろいろディスカッションしあった人です。
上田:
そうですか。石坂先生は海外での研究が長い方ですか。
斎藤:
日本ではほとんど研究されていません。
上田:
ではお弟子さんも海外で育てられたということですね。
川村:
斎藤先生は何年ぐらい行っていらしたんですか。
斎藤:
1986~88年の2年半です。石坂先生の奥さん、石坂照子先生の弟子です。照子先生はマスト細胞の研究者で、ヒトのマスト細胞の培養に初めて成功された方ですけども、線条体黒質症と言って脳の病気になられて、病気の療養もあって、1996年に石坂先生は引退されて、照子先生を連れて日本に帰られた。照子先生の故郷の山形で、山形名誉市民であるので、山形大学でずっと照子先生の面倒を見られた。線条体黒質症というのは、相手の言っていることはわかるけど、自分では意思を伝えることができない、という病気で、今も照子先生は入院中ですが、どうもわかっているんではないかな、と思える状態ですね。石坂先生が天皇陛下から賞をもらった、と言うと、こうやって(うなづいて)意思表示ができる、そういう状態ですね。石坂先生は照子先生の看病を毎日通勤のように病院に通っておられた。看病というか、そういう病気なので「外界から常に刺激を与えていないと、どんどん遠ざかってしまうから。誰がやると言ったら俺しかいないし、俺が照子にさんざん迷惑かけたんだからそのくらいはすべきである。」とロジカルに考えて、それしかないと強い信念で、亡くなるまで毎日通い続けた。そこにオフィス作って、そこでPC操作して世界中の方とメールのやりとりを亡くなるまでされたんですよ。すごい話です。なかなかできないですよね。
石坂先生って怖い先生では、と怖がっている人も多いんですけど、僕は石坂照子先生の弟子だったんで、なんとなく家庭の事情がよくわかる(笑)、割と抵抗なく石坂先生と話のできる数少ない弟子の一人だったんで、死ぬ間際までいろんな連絡を取ったり、共同研究の話をしていました。
一番最後に石坂先生が燃えていたのは、IgEを無くしてしまう研究なんです。実は、それはもうできているんです。マウスですけれども。あと一ヶ月したら、プレスリリースもできると思いますが、石坂先生と私が電話でいろいろしゃべって、そこから生まれたアイデアですが、妊娠しているマウスに注射すると、子供のマウスは長い間、IgE抗体が一切できないんです。少なくとも赤ちゃんのアレルギーを根絶できる。重症のアレルギーが発症するのは、生後3〜4ヶ月までです。その先もいろんなアレルギーを発症しますが、本当に困っているのは、いろんな喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギーマーチというんですが、最重症のアレルギーになるのは生後4ヶ月で決まるんです。少なくとも、その期間、IgEをゼロにしてアレルギーを予防できるワクチンを、マウスの段階ですが、開発できたんです
上田:
では、将来的に臨床試験にかけていろいろ応用されますね。
斎藤:
そうです。石坂先生が亡くなってから論文を書きましたが、そもそも石坂先生のアイデアですから、石坂先生の名前の入った最後の論文になります。朝日新聞の記者は石坂先生と仲良しで、なんとなく嗅ぎつけて、何度も連絡してくるので、少なくとも朝日新聞にはニュースに載ると思います。
上田:
素人考えですが、IgEを無くしてしまって、何か副作用とか、出てこないんですか。
斎藤:
それがほとんどないんですよ。オマリズマブって、IgEを作らせない、ブロックしている中和抗体なんですが、それでIgEの働きを抑えても、ほとんど副作用はないです。妊婦さんに使ってもほとんど問題ない。1000例使って、寄生虫感染が1例出たか出ないか、そのくらいです。IgEがなくても、少なくともマウスでは寄生虫感染は全然困らない。寄生虫感染に関して重要なのは、T細胞と自然リンパ球なんです。好酸球もちょっとは役に立っていますが、IgEは好酸球より重要ではない。あった方がいいけど、なくても全然困らない。
だから、石坂先生もいつもおっしゃっていましたよね。「IgEって、いったい何のためにあるんだろうか。こんなもの要らないじゃない。」と。それが発想なんですよ。なくせばいい。
参加者HH:
IgEのノックアウトマウスはないんですか?
斎藤:
たくさんいますが、ぴんぴんしています。寄生虫にも困らないです。
上田:
いやー、面白いですね。そろそろ時間になってきましたが、今日は本当にありがとうございました。 (拍手)
川村:
余談ですが、こういう映画の仕事をやっていて楽しいのは、最前線の先生方と一緒に生命現象を追いかけて、時には予想を超えた映像を捉えることもあり、研究者をも興奮させ刺激するということです。斎藤先生から、石坂公成先生のお弟子さんの多田富雄先生、そのお弟子さんが奥村康先生というお話がありましたが、1本目の『炎症細胞』の時のこと。
当時、フィルム作品ですから、撮影しても現像しないと見られない。録音してもネガ編集を終えて、試し焼きし、微調整して本焼きしないと完成しない。とても時間がかかります。奥村先生も録音前の試写でご覧になって完成を楽しみにしてくださっていたのに、スポンサー側が先走りして、試し焼きのプリントを多田富雄先生に持って行って見せてしまったんですね。そしたら、面白いと思った多田先生がすぐさま「君、いいものを作ったじゃないか」と奥村先生に電話したものですから、さあ、たいへん。(笑) 奥村先生としては、一方では嬉しかったかもしれませんが、自分がまだ見ていないのになんで見せに来ないんだとお怒りを買いまして、スポンサーの責任者からとばっちりなのですが、うちの武田も朝から夕方まで一日順天堂大学で待って奥村先生にお詫びした次第です。もちろんご機嫌を直して2本目にも出てくださいましたが。
次回の予定は12月22日(土)です。『薬と人間』という薬の歴史の映画と、『Cell Universe』という、つくば科学万博で私たちが展示と映像を引き受けたスズケンさんの細胞空間という記録で科学のあり方を問いかける映画です。
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