第52回春季 歯周病学会 学術大会
2009年05月15日(金)-16日(土) 場所:岡山コンベンションセンター
Porphyromonas gingivalis の血管内皮細胞への侵入過程の動画撮影
高澤淳仁,真壁洋平,原井一雄,松本英彦,林正浩,高岡成好,根本優子
キーワード:P. gingivalis,血管内皮細胞,動画撮影

【目的】歯周病原性細菌が動脈硬化部位から検出され,その進展に関与していることが示唆されているが,歯周ポケット内の病原体が遠隔の血管内皮へ侵入する過程はいまだ明らかではない。本研究では強い毒性を持つP. gingivalis の培養,および顕微鏡撮影方法を確立し,血管内皮細胞と共培養することによって本菌の宿主細胞への侵入過程を動的な映像として捉えることを目的とした。

【材料および方法】P. gingivalis ATCC 33277株を37℃,嫌気条件下でメナジオン添加ABCM液体培地で一晩培養した。希釈菌液を厚さ0.5mmの寒天培地に塗沫し,顕微鏡撮影用の嫌気チェンバーに封入し,顕微鏡下微速度撮影を行った。また,ブタ頚動脈より初代培養した血管内皮細胞に,本菌株を100 MOIで播種し,顕微鏡下微速度撮影した。

【結果および考察】設定した培養条件下においてP. gingivalis は一様な短桿菌の形状を呈した。顕微鏡(倍率×1000)下微速度撮影において,単個菌のP. gingivalis が約7時間で2分裂し,34時間まで分裂・増殖し続け,画面を満たすコロニーを形成する映像を捉えた。さらに,血管内皮細胞との共培養条件で本菌は細胞膜に付着後,その周囲の細胞膜が菌体を包み込むように隆起し,数分間で菌体が細胞内に侵入する様子を動画撮影することに成功した。通常,体内に侵入した細菌はすみやかに宿主免疫により破壊・排除されると考えられるが,血管内皮細胞へ直接侵入しうるならば宿主免疫を免れ,さらに血管内皮組織に初期炎症をもたらす可能性も示唆され,本菌の血管内皮細胞へ侵入経過をダイナミックな映像で捉えたことは非常に有意義であると思われる。

【学会で発表した映像】

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