細菌性腸炎 〜発症機序と治療〜
制作年月 1982年11月
時 間 37分

あらすじ 1980年代、経済成長によって輸入食品や海外旅行が日常のこととなるとともに、さまざまな感染性下痢症が日本に持ち込まれるケースも急増してきました。

細菌性の腸炎には、菌の産生する毒素によって下痢症状がひきおこされるものと、菌が腸の上皮細胞に侵入して組織を破壊するものの二種類があります。
毒素原性大腸菌の産生する毒素STによって、腸絨毛が帽子を脱ぐように粘膜上皮が剥がれていき、組織侵入菌である赤痢菌は細胞に侵入し、鞭毛もないのに暴れ回り細胞を破壊していきます。また、コレラ毒素による透過性の亢進などを、生きたマウスの腸粘膜で詳細に追いました。さらに、1950年シラス中毒事件からみつかった腸炎ビブリオは強毒を産生し、心筋細胞を障害し、ラットに心臓の細動、心停止を引き起こします。

 この映画は、かつての大阪の桃山病院感染症病棟、阪大の微生物病研究所、大阪空港と神戸の検疫所などの協力を得て撮影され、感染性下痢症の水際での上陸防止を警告しました。

「細菌性腸炎は遠い昔の伝染病としてあるのではない、いつでも跋扈する機会を窺って私たちの身近に息を潜めている。」まさにこの年、アメリカでO157による食中毒事件も起こったのですが、医学界が新興感染症の重要性を認識しはじめるには、このあと十数年の時を要したのです。
受賞歴
企 画 大日本製薬株式会社
監 修 橋本 博 (大阪市立桃山病院 院長)
三輪谷 俊夫 (大阪大学微生物病研究所 教授)
学術指導 赤尾 満 (大阪市立桃山病院)
足立 利幸 (大阪市立桃山病院)
竹田 美文 (大阪大学微生物病研究所 助教授)
本田 武司 (大阪大学微生物病研究所 助手)
※企画社名、監修・指導学者の所属・肩書き等は完成当時のものです。
スタッフ 演出:武田純一郎
脚本:武田純一郎
撮影:加藤和三 / 長谷川高久 / 奥田幸夫
研究:浅香時夫
解説:伊藤惣一
制作デスク:轟泰行
制作:吉野俊昌