腸内菌叢と宿主 (前編 / 後編)
制作年月 前編:1973年9月 / 後編:1975年8月
時 間 前編:31分 / 後編:29分
あらすじ 腸内菌叢と宿主はどんな関係なのでしょうか。マウスの腸管を舞台としてみていきます。組織培養し顕微鏡下で微速度撮影すると、腸絨毛は独自の運動性をもっています。この映画で発見された現象です。そこに腸内常在菌の乳酸菌を入れた時には、組織の機能が促進されます。

また、生きた腸粘膜を用いて、外来菌である病原菌を滴下し、宿主に与える影響を腸絨毛でみてみます。コレラ菌では絨毛の血管の凝縮、病原性大腸菌では組織の爆発的な破壊、サルモネラ菌では血流を保ちつつ血管が下がって消退するという注目すべき現象が見られました。いずれも通常マウスより、無菌マウスの方 が反応が遅く現れますが、一度現れると2倍も早く進行します。 1970年代まだ日本では腸内菌叢と腸内組織の関わりは、未知の課題ばかりでした。これを第1回目の実験として、我々は研究者とともにさらなる実験に取り組むことになりました。

1975年ニューオーリンズの日米医学協力研究会コレラ部会に特別上映され、細菌感染によって腸絨毛が帽子を脱ぐように脱落していくシーンは、多くの研究者に衝撃的な印象を刻んだと聞きました。

前編から2年。前編で見られた、筋細胞を持たない腸絨毛の持つ自動性の意味、またサルモネラ菌感染で腸絨毛に現れた血流を保ちつつ血管が消退する反応をさらに追求します。

腸管の漿膜面から微速度撮影することによって、絨毛内部に溜まった物質が、絨毛の横断面の収縮運動によってリンパ管に送られることが分かりました。収縮を起こしている機構はまだ良く分かりません。また、細胞を一時に破壊するコレラ菌、細胞内に侵入して増殖する赤痢菌に対し、サルモネラ菌による腸絨毛の血管消退は死後変化ではなく、先端に水腫ができ、組織が剥離していく現象と確められました。無菌化したヌードマウスの実験では、細菌の影響が免疫反応を介し て現れることを示唆しています。

長い歴史が作り上げた腸内菌叢と宿主の複雑な関係は興味の尽きないテーマです。
受賞歴 (前編)
1973 ベニス・パドバ国際科学・教育映画祭 生理学部門第一位賞
1974 リオ・デ・ジャネイロ国際科学映画祭 金賞
1974 日米医学協力計画コレラ専門会議 特別参加
日本医師会推薦
(後編)
1975 日米医学協力計画コレラ専門会議 特別参加
1976 国際科学技術映画コンクール東京大会 銅賞

企 画 ミヤリサン株式会社
株式会社宮入菌剤研究所
監 修 佐々木 正五 (慶応義塾大学医学部微生物学 教授)
学術指導 (前編)
蜂須賀 養悦 (名古屋市立大学医学部細菌学)
石田 名香雄 (東北大学医学部細菌学)
小張 一峰 (WHO西大西洋地域伝染病)
松永 藤雄 (弘前大学医学部第一内科)
光岡 知足 (理化学研究所動物薬理研究室)
中谷 林太郎 (東京医科歯科大学医学部微生物学)
小沢 敦 (国立東京第二病院細菌学)
桜井 信夫 (千葉大学医学部衛生学)
竹内 昭雄 (Walter Read医学研究所実験病理)
渡辺 慶一 (慶応義塾大学医学部病理学)
(後編)
小沢 敦 (東海大学医学部 教授)
渡辺 慶一 (東海大学医学部 教授)
中根 一穂 (東海大学医学部)
大西 信彦 (東海大学医学部 助手)
大橋 誠 (国立予防衛生研究所 室長)
協 力 (前編)

(後編)
H.A.ゴードン (ケンタッキー大学医学部 教授)
小張 一峰 (千葉大学医学部 講師)
光岡 知足 (理化学研究所 主任研究員)
※企画社名、監修・指導学者の所属・肩書き等は完成当時のものです。
スタッフ (前編)
演出:武田純一郎
脚本:武田純一郎
撮影:長谷川高久
研究:浅香時夫
音楽:池野成
解説:川久保潔
制作デスク:郡司良
制作:林六郎
(後編)
演出:武田純一郎
撮影:長谷川高久 / 上原剛
研究:浅香時夫
音楽:池野成
解説:川久保潔
制作:林六郎